バーバリーを失った三陽商会の闇
アパレル業界といえば、華やかなイメージがあり、新卒の就職活動生だけでなく、中途採用枠を狙う転職活動者にとっても人気が高い業界の一つとなっている。
そんな、アパレル業界でリストラの嵐が吹き荒れている事態を読者はご存知だろうか?
アパレル業界を代表する「三陽商会」、「ワールド」、「レナウン」等の大企業が赤字に転落し、人員削減を伴うリストラの嵐が止まらない事態となっている。
赤字に陥っている理由は各社各様であるが、これまでの歴史上、類を見ない非常事態に陥っている。
■三陽商会の赤字・リストラの原因は?
三陽商会の企業分析(強み・弱み・特徴)と赤字転落の理由
最初に、三陽商会について簡単に説明しよう。
三陽商会の商品の販売チャネルは百貨店が主体であり、自社ブランドに加え、海外の様々なブランドともライセンス契約を結んでいる。
社名の「三陽商会」の由来は「三井」・「三菱」など有力財閥の「三」と、創業者である吉原の父、「陽」に因んでつけられた背景がある。
そんな三陽商会が赤字から脱却することができず、大規模なリストラを連続で実施している。
赤字の主な原因として、イギリスのバーバリー社とのライセンス契約が2015年6月30日に切れ、高級ブランド商品「バーバリー」という稼ぎ頭を失ったことが主な理由として挙げられる。
現在は、イギリスのバーバリー社に依存しないビジネスモデルを構築するため、バーバリーの後継ブランドとして、スコットランド発祥の防水コートの老舗として知られる衣料会社マッキントッシュと提携し、新たな自社ブランド「マッキントッシュ・ロンドン」を立ち上げている。
また、ブランド面以外でも、三陽商会の主要な販売チャネルである百貨店自体が厳しい状況にあり、年々業績が悪化しており、Amazonや楽天市場、ZOZOTOWNなどのネットアパレルブランドの好調が向かい風となっている。
なぜ?三陽商会はバーバリーとの契約を継続できなかったのか?
上述の通り、三陽商会がバーバリーブランドを失った影響は非常に大きく、後継ブランド(主に、「マッキントッシュ ロンドン」、「ブルーレーベル・クレストブリッジ」、「ブラックレーベル・クレストブリッジ」)が育っていない状況が長期に亘って継続されている。
三陽商会のブランド別の業績は非公開となっているが、三陽商会の半分以上の利益をバーバリーが生み出していたとの話が有力である。
これらを踏まえると、「なぜ、三陽商会はバーバリーとの契約を継続できなかったのか?」という疑問が生じる。
バーバリーとのライセンス契約が継続できなかった理由として、「バーバリー社と三陽商会の間におけるブランド戦略の方向性の差異」が挙げられる。
イギリスのバーバリー社はブランド力の強化を目指しており、販売価格の引き上げを図っていた。
その一方で、日本国内でバーバリーブランドを取り扱う三陽商会は、「バーバリー・ブラックレーベル」と「バーバリー・ブルーレーベル」という日本独自のブランドを展開し、販売価格も世界水準では低い水準に設定されていた。
つまり、イギリスのバーバリー社が推進するバーバリーブランドの強化策の足を引っ張る真逆の戦略を三陽商会が実行していたのである。
このようなバーバリーブランドの取り扱いの方向性の違いをイギリスのバーバリー社が好意的に受け取らず、三陽商会とのライセンス契約を打ち切ったとの説が有力である。
また、上記のようなブランド戦略の差異だけでなく、バーバリー社が自らの手で日本市場でブランド展開を図りたいとの意欲を持っており、既に2009年時点でライセンス契約の打ち切りを確定していたとの説も浮上している。
なお、2009年時点で、ライセンス契約の打ち切りが分かっていたにも関わらず、社内対応が遅すぎたとの内部情報が本ヒューマンデザイン総合研究所の独自調査でも判明している。
■三陽商会の赤字・リストラ速報
三陽商会の従業員数の推移
上記の「バーバリーを失ったブランド力の低下」と「Amazonや楽天市場といった電子商取引の台頭」を主な理由とし、従業員数が年々減少している。
以下は、三陽商会の従業員数の推移であり、非常に生々しいデータとなっている。
一見すると、従業員数に変化が無いように見えるが、これは、ルビー・グループ株式会社を買収したことが背景にある。
買収による従業員の増加を排除するため2018年4月時点で考える。
すると、2010年4月時点の1,935名から2018年4月時点の964名まで、約1,000名の従業員が会社を去り、従業員数が半減したという悲惨な状況が見えてくる。
【2020年4月時点】1,650名
【2019年4月時点】1,734名
※ECに特化したルビー・グループを買収
【2018年4月時点】 964名
【2017年4月時点】1,268名
【2016年4月時点】1,309名
【2015年4月時点】1,318名
※バーバリーとのライセンス契約が打ち切り
【2014年4月時点】1,341名
【2013年4月時点】1,658名
【2012年4月時点】1,741名
【2011年4月時点】1,820名
【2010年4月時点】1,935名
三陽商会のリストラ・人員削減情報速報
以下、三陽商会のリストラに関する公式声明から一部引用する。
速報概要 | |
2020年 10月
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アパレルメーカーの三陽商会が、2020年10月6日に160店舗を閉鎖する方針を発表した。 2021年2月までに160店舗の閉鎖を完了する予定であり、今回の店舗の閉鎖に伴い、販売スタッフとして雇用していた契約社員500名の人員を削減する。 上記の物件費と人件費の削減に加えて、広告宣伝費や業務委託費を削減し、収益性を高める計画を推進する予定。 |
2020年 7月
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アパレルメーカーの三陽商会が、2020年7月17日に東京の銀座に位置する自社保有の商業ビル「ギンザ・タイムレス・エイト(GINZA TIMELESS 8)」を売却する方針を発表した(売却先は非公開)。 同ビルは、2019年9月にリニューアルしたばかりの主要店舗であり、旧バーバリー銀座店でもある。 三陽商会は、今回の自社ビル売却により67億円の利益を計上し、財務体質の強化に繋げる。 |
2020年 4月 |
アパレルメーカーの三陽商会が、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2020年2月期の業績が28.8億円の営業赤字に陥る公式声明を発表した。 今期の赤字を含めて、三陽商会は、4期連続の営業赤字となる(2019年-21.8億円、2018年-19.1億円、2017年-8.4億円)。 三陽商会の主な販売チャネルは百貨店であり、百貨店に依存するビジネスモデルとなっている(ECの売り上げ構成比は全体の12.7%)。 このため、2020年3月の店頭販売実績は前年同月比で56%の減少と驚異的な業績悪化となっている。 三陽商会は、「再生計画」を掲げており、2021年の2月期に、全店舗の1割強にあたる約150店舗を閉鎖する方針を示しており、従業員数の減少が更に加速することが予想される。 |
2018年 12月
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アパレルメーカーの三陽商会が、2018年9月21日に希望退職者を募集、つまり人員削減を伴うリストラ策に対し、247名の社員が応募したことを明らかを発表した。 希望退職の募集期間は、2018年10月29日~11月26日であり、退職希望者は会社都合として扱い、特別退職金を支給することに加えて、再就職支援会社を通じた再就職支援を行う。 今回のリストラ策に伴う特別退職金などの費用として、約22億円の特別損失を計上する予定。 |
2018年 4月 |
アパレルメーカーの三陽商会が、4月27日にラグジュアリー・ブランドに特化した「ルビー・グループ株式会社」の買収を公式発表した。 カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が保有していたルビー・グループ株式会社の全体の80%の株式を三陽商会が取得したため、以降は三陽商会の子会社として位置付けられることになる。 ルビー・グループ株式会社は外資系のラグジュアリーブランドを中心にECの戦略立案やサイト構築運営、コンサルティングを行う企業として2011年に設立された。 |
2016年 10月 |
アパレルメーカーの三陽商会が、2016年6月24日に希望退職者を募集、つまり人員削減を伴うリストラ策に対し、249名の社員が応募したことを明らかを発表した。 希望退職の募集期間は、2016年10月11日~10月21日であり、退職希望者は会社都合として扱い、特別退職金を支給することに加えて、再就職支援会社を通じた再就職支援を行う。 今回のリストラ策に伴う特別退職金などの費用として、約26億円の特別損失を計上する予定。 |
■アパレル業界主要企業一覧
ルイ・ヴィトン、グッチ、エルメス 、オンワード樫山、ワコール、ワールド、三陽商会、フランドル、アルマーニ 、コム・デ・ギャルソン、トゥモローランド、アバハウス 、サンエー、ジュン、 バーニーズ、インパクト21、イトキン、ファイブ フォックス 、ビギ、クレヨン、島田商事、三崎商事、ポップグ、イッセイミヤケ、シップス、ユナイテッドアローズ、ナルミヤ、ヨウジヤマモト、ビームス、クラヴィス、 レリアン、エドウイン、ミキハウス、ヴァンドーム ヤマダ、ノーリーズ、東京スタイル、サザビー、ファーストリテイリング、オリゾンティ、三喜商事 、ヤマダヤ、フォーティファイブアールピーエム、チャコット、キャン、アズノゥアズ、ブルーグラス、ブルーグラス、カネコ イサオ、ポイント、ヤングファッション研究所、イズム、ベイクルーズ、フォクシー、パル、セラビ、エフ・ディ・シィ・プロダクツ、キング、イーストボーイ、タキヒヨー、シュガー・マトリックス、ルック、東京キャン、かねまつ、シティーヒル、ファッション須賀、オールスタイル、ダーバン、ララ・プラン、キッドラボ、アール、ティン・パン・アレイ、ジュン アシダ、玉屋、鈴屋 、ギャップジャパン、瀧定大阪、銀座ダイアナ、クロスプラス、青山商事、はるやま商事、銀座マギー、ナイスクラップ、レナウン、卑弥呼、キャビン 、ジョイックスコーポレーション、アンビデックス、 良品計画 、デリカ、瀧定名古屋、NDCジャパン 、上野商会、ピーアンドエム、ライトオン、豊島 、リオチェーン、ジャパン、ファミリア、聖林公司、ビーズインターナショナル、モリリン、赤ちゃん本舗 、サン・フレール、鈴乃屋、コスモエイ 、H.P.、シンク、コラボレーション、サマンサタバサ、ジーンズメイト等々
■大リストラ時代でも一生安泰の生活を送れる企業はどこか!?
長年に渡り、業績に貢献してきたビジネスマンでも企業から簡単に切り捨てられる時代であり、30代、40代、50代と高齢になるほど転職市場価値は下がる一方です。
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結論から伝えると、リーマンショックや東日本大震災、コロナショックといった大恐慌でも、業績が悪化しにくい企業のリスト。
言い換えれば、『一度就職さえしてしまえば、定年まで安定した人生を送れる可能性が非常に高い超優良企業のリスト』です。
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